
長岡市大口にあるこの平屋は、もともと親族が暮らしていた家でした。
十数年前、入院していた家族が、退院したら車椅子でこの家に戻ってくる予定でした。その帰りを迎えるために、家族は家そのものを建て直すことを決めました。
段差のない廊下、車椅子でもゆったりすれ違える広い通路、そして使いやすいように広くつくられたトイレ。間取りをあえて平屋にしたのも、「一日でも早く、一人でも多くの時間を、同じ家で家族と過ごしてほしい」という、ただそれだけの願いからでした。


しかし、その方は退院することなく、そのまま亡くなってしまいました。
家族が心を込めて建て直したこの家は、一度もその方を迎え入れることなく、長い間、静かに時を止めたままになっていました。
十数年という歳月が流れる中で、私はずっとこの家のことが心に引っかかっていました。
誰かのために、これほどまでに丁寧に「暮らしやすさ」を考えて造られた家が、このまま使われずに朽ちていくのはあまりにもったいない。そう思うようになったのです。
同時に、この長岡というエリアには、車椅子を利用される方や、障がいのあるご家族、そして大人数で泊まれる宿が少なく、「行きたいけれど、泊まる場所がない」という理由で旅を諦めてしまう方々がいることも知りました。
かつて、たった一人の家族のために建て直されたこのバリアフリーの家。
その想いのかたちを、今度は多くの方々のために活かせないか。
車椅子を利用される方にも、小さなお子さん連れの大家族にも、「気兼ねなく、家族みんなで同じ屋根の下に泊まれる場所」として、この家をもう一度、生き返らせたい。
それが、大口民泊というプロジェクトを始めた、私の一番の原点です。
この家に流れていた時間や、そこに込められていた家族の願いを、これから訪れてくださる皆さまの新しい思い出へとつなげていくこと。それが、亡くなられたご本人と、この家を大切に守ってきたご家族への、何よりの恩返しになると信じています。
誰も泊まる人がいなくなってしまった家が、これからは誰かの「また来たい」と思える場所になるように。
そんな願いを込めて、私たちはこれからもこの民泊づくりを続けていきます。